大学選手権に向けて
11/18記
関西リーグもまだ残していますが、早くも選手権モードです。
いつも終わってから書いていることをこの時期だから、書いてみました。良い方に裏切って欲しいなあ〜。
○ディフェンス
「前に出てディフェンス」
圓井監督の言葉ですが、ディフェンスは確かに良くなっています。しかしながら、関東学院やサントリー、昨年の法政大のそれとはレベルが違います。彼らは全力疾走というべき速度でトイメンに襲いかかっています。攻撃的なディフェンスと言われる所以です。しかし、これは闇雲な突撃ではなく、ゾーンを前に出すイメージのしっかりとした連携が前提です。コミニュケーションが乱れると、そこから破綻するリスクがある高度なプレーで、付け焼き刃でここまでのレベルに達することはないでしょう。今年のここまでの法政の例を挙げるまでも無いかもしれません。
もちろん、圓井監督が闇雲に前に出ろと言っている訳ではないです。ただ、求めたいのはその上にある同志社のオリジナリティーです。
ディフェンスではもう一つ。タックルに強く入れないのは個人のモチベーションとか技術の問題よりも、組織力の問題であると感じます。カットインされた場面で、外側にいるプレーヤーが流れるようなタックルになるのは彼だけの問題ではありません。ボールキャリヤーがタックラーに正対しなければならないような状況を作り出すことが大切です。去年であれば、伊勢が激しいタックルを決める場合に大西、徳野という両側のプレーヤーの追い込む役割が大きかったはずです。
一方で、京産大戦での2人がかりでボールを奪いに行くタックルは何処となく啓光学園を彷彿とさせました。これは田中主将、徳野、表と主力選手に出身者が多いからでしょうか。ただ、啓光学園はFWによるバッキングアップはもっとしっかりしていたと思いますが。しかし、今までの同志社にはあまり見られなかったという点で大きな意味のあることだと思いますし、これも立派な攻撃的なディフェンスです。
「前に出る」、「追い込む」、これらは必ずしも相反するものでは無いですが、ニュアンスは違います。同志社のディフェンスは今後どのような展開をみせてくれるのでしょうか。
○せめぎ合い
オフェンスでは、ディフェンスとどちらが先にラインを整えられるか。相手との戦いの前に時間との戦いに勝たなくてはなりません。今年も選手権ではこうした激しいせめぎ合いが行われるでしょう。相手との我慢比べです。ゲインラインを切れなくても、陣地を下げられても、短気は禁物。大切なのはボールの継続です。そして、相手に僅でもギャップを見つけた瞬間が散りばめれた才能を生かすときです。そこではじめて煌めく個の開放があると思います。
(11/23早慶戦からの追記) 早稲田強いです。グランドの横方向を存分に使った継続ラグビーでした。ボールの継続を意識してフェーズを上げていく。その際に少ない人数での球出しをすることで数的に優位な状況(4対2)を作っていたのですが、こうした説明よりも継続されるボールを前に運ぶ手段としてCTB山下という才能を当てたという方がしっくりくるかもしれません。無理しないでつないでいくのではなく、攻撃的な継続でした。だから、相手への圧力があるのでしょうね。
もう少し具体的には、慶應のドリフト対策でしょうが、ラインは立つ間隔を広げて自らギャップを創造する努力が見られました。SO太田尾はギャップが見えると、そこに球をすばやく送って、一気に勝負をかけていました。慶應側から見れば、あれほど勝負が早いとは想像していなかったのではないでしょうか。FWは密集からの集散の「散」が遅く、BKは人数が少ないにも関わらずツメるディフェンスをできていなかったです。こういうアタックをされると「前に出る」と「追い込む」を両立させないとどうしようもないでしょう。慶應だけでなく、同志社にとっても大変なことになってしまいました。
早稲田の連続攻撃で見逃してはいけないのが、正確なダウンボールです。これは基本技術の1つですが、徹底して意識して取り組んだ成果でしょう。相手ディフェンダーが手を伸ばせない位置に置いています。慶應のものと比べるとその差は明白でした。このような地道な技術なくして継続ラグビーはあり得ないと言うことしょう。
少ない人数での球出しにしても、ダウンボールにしても、技術だけではできません。体力的な優位性があってはじめて試合で実践できるものでしょう。日本一に向けてまた強敵が増えた思いとは別に、ラグビーファンとして、こんなラグビーをみせてもらい感謝です。
○モール
ルール改正で2度押しできるようになったモール。攻撃側に有利なルール改正です。とくに今年の同志社はCh0はNO8に任せて、Ch1付近を分厚くFL、LOが突くという攻撃を得意としています。モールを継続して押すことで、相手FWをモールの中に巻き込む。できれば球出し直前には相手FWが走るコースをじゃまする形でローリングさせる。そこから竹山の精度のいいロングパスで奥薗、藤井でタテを突いてゲインを切れれば、数的優位は生まれるでしょう。モールの使い方がポイントとなると思います。
○球出し
関東との違いは球出しにかかる時間に集約されるかもしれません。関東の試合は見ている方が疲れるほど、めまぐるしくボールが動きます。やっている方もこれでは頭の整理ができなくなるのではと思いますが、それが完全に身に付いています。オフェンス時はどこまでもボールに付いていき、アッという間にボールを回してしまう竹山のおかげで大丈夫でしょう。しかし、ディフェンス時には関西ペースを早く払拭しなくてはなりません。
今年の最大の魅力は戦術が固まっていないことでしょう。東からみれば、どんなチームかまるでわからないでしょう。年明けまでにチーム力を丸裸にされた昨年。関西リーグで押し通した「SO大西にボールを集めてから」という戦術は関東学院では大西周辺を固めた相手のゾーンに阻まれました。今年は研究するネタをまだ提供していません。これこそが田中主将の言う「こっそり」でしょう。
昨年よりチーム力が落ちているという意見も多いですが、それも承知の上で、今年は絶好のチャンスだと思います。