(番外編)
パシフィックリム第2戦 アメリカ戦 5/27
今日は雨の花園でした。フラットラインの細かいパス回しにも、観戦にも悪いコンディションだと思いながら、当日券を求めようとしていると、男女のお二人連れにチケットが1枚余っていると話しかけられました。渡りに舟と購入させてもらいました。ありがたいことに屋根尽きのメイン指定席。さわやかなカップルでした。お幸せに・・・。
さて、試合の方ですが、(私などが感想を書くのもはばかられる)日本中のラグビーファンが注目の一戦。ジャパンとしてはフラットラインの成果を見せて初戦の借りを返したいところです。
<フラットライン>
注目のフラットラインですが、今日はうまく機能したようには見えませんでした。機能しなかったというと誤解されるかもしれませんが、SO大西に問題があったわけではありません。しかし、フラットラインからの連続攻撃で、大きなゲインがほとんどできなかったのは事実です。後半は試合が進むにつれて、大西こそ浅い(シャロー)位置を保つもののラインは次第に深くなってしまいました(このこと自体は一つのオプションと考えれば問題ではないのですが)。大西はディフェンスにぎりぎりまで詰めて、精度の良いパスを繰り出していました。しかし、その後です。パスを受けたCTBがことごとくトラップされて、もう1つ外へのパスが通らない。当然、優位な密集も作れない。相手ディフェンスの意図通りになっていました。とはいえ、時折、相手ディフェンスを揺さぶった形も見られましたが、割合雑さの目立ったアメリカ相手にこの程度では少々がっかりしました。
なぜ、フラットラインが通用しなかったのか?
ジャパンが悪かったというよりも、アメリカのディフェンスが良かったためだと思います。
@アメリカのFW、BK一体となった防御ラインが鉄壁でした。とりわけ、FW陣に防御意識が高く、フェーズが上がってもなかなか崩れません。攻撃側のジャパンのラインよりもディフェンスラインの方が2人ほど多かった場面もありました。
Aもう1つはジャパンの球出しが遅かった。相手ラインが揃ってから回していました。これは密集への集まりがアメリカの方が早いためだと思います。
その結果、スタンドオフ大西がうまいパス回しをしているにもかかわらず、受けた選手にマークが付いておりクラッシュされる。あるいは焦ってノックオン。しかし、大西へのマークはもっときつく、自分でランもできない。このような場面が多かったです。フラットラインはFWが優位の時に機能する
やはり、これを感じます。大西にはもう少しいい条件でデビューさせてあげたかった。
ジャパンが攻めている時にアメリカFWがラインにたくさん残ったのに対して、フェーズが上がると攻めているジャパンの人数が減っていました。この原因は短絡的かもしれませんが、体力差に行き着くと思います。1対1で負けるので密集で消耗する人数がジャパンの方が圧倒的に多い。しかも密集でダメージを受けてすぐには立ち上がれないケースも多々ありました。
確かにジャパンFWの集散は遅かったし、経験不足と思われるプレーもありました。しかし、これも所詮は相手あってのこと、結局は体力差に帰着すると思います。モール、ラック以外でもジャパンFWには
○タックルが相手にいってしまい、ボールにいっていない
○マイボールラインナウトが獲得できない
○密集で不必要な反則が多い
○第3列のディフェンス力
○スタミナ不足
などが目に付きましたが、これも体力差が故でしょう。もちろん、BKの体力差がFWに跳ね返ったことも否めませんし、敗因のすべてをFWに押しつけるつもりはありません。しかし、試合後、アメリカリザーブだけがグランドに残り、コーチの指導の下、時間をかけて筋トレをしていたシーンが私には象徴的に映りました。
この試合を一言で言うと、「FWにはフィジカル面での差があり、BKはそれを挽回する匠の技は出しきれなかった。」
ぎりぎりのところで死力を尽くして戦ってくれた選手にはあまりに冷たい言い方ですが、こう思います。
しかし、これとは矛盾するかもしれませんが、この試合からはこのようにも考えます。ジャパンはポジションごとの役割に忠実すぎる。切迫した場面で、ジャパンの選手は交錯した動きをする事があります。すなわち、自分の本来のポジションに戻る動きです。ルースボールが眼の前にある場面でもあったと思います。(その反面、FWはポジションスキルも未熟に感じるのですが)
両チームの差はわずかでしょう。しかし、明らかな差がそこにはありました。それが何かはわかりません。経験という言葉で片づけられるのかもしれませんが、それ以上の何かを感じました。
テレビ観戦もしましたが、現場で見るのと試合の印象がかなり違いました。上田昭夫さんの軽快なトークが大きいと思います。元気のあまり感じられないジャパンとは対照的にこの人は元気ですね。結構好きです。
以上、課題ばかり書きました。こんなことは専門家に任せて、印象に残ったプレーをあげてみます
・大畑のサイドチェンジからの好走。栗原のカウンター。織田のラストラン。場内が何度も沸きました。バックスリーの活躍、やっぱりいいものです。この日は中でも栗原。ミスもありましたが、ポジショニングやコース取りが良かった。地味な仕事もやっていましたね。
・後半の大西が持ち込んでつくった左サイドのこり10m付近の密集から苑田がロングのパスを増保がつないで、栗原が内へ切れ込んで相手を十分引きつけてから織田へのラストパス。織田が右隅へトライ。完璧でした。
・難波、吉田のディフェンス。元木、マコーミックほどの迫力はなくとも、大きなアメリカCTBを止めていました。難波は大西と息が合っているのもうれしかった。
・大西。最初のトライにつながる切れ込みはかっこよかった。みんにショータローとかわいがられて、チームに馴染んでいました。
・中道。後半のフッカーはつらそうでしたが、それまでの彼の骨惜しみしない動きはチームの手本。ライン攻撃もありました。大学3年の頃とは別人ですね。豊山を気づかって引っ張っていた優しい一面も。
・渡辺。後半にはスクラムからのディフェンスに失敗して交代させられましたが、これはご愛敬。不慣れなNO8でよく走っていたと思います。これは評価して欲しいです。
そして、同志社の選手。この試合中、実はずっと大西を追っていました。織田の快走で場内が沸き返っているときも彼を見ていました。
前半の後半は悩んでいるように見えました。相手の厳しいマークの付いた選手にボールを配球し続けなくてはならない苦悩。スタンドオフとしてはベストのプレーをしているが、フラットラインが動きださない苦悩。チームの苦戦を背負い込んでしまったよう姿に感じました。責任感の強い彼らしい姿でした。
しかし、前半はおとなしかった彼が、後半は声が出なくなった他のチームメイトとは対照的に声を出して、チームに檄を入れてました。自分でチームを引っ張っていこうという姿勢に見えました。満身創痍で限界に近かったはずです。この姿勢が救いでした。いずれにせよ、この試合で大西がジャパンのSOとして定着したのは確実だと思います。
川嵜はNO8で途中出場。ペナルティーからの突破もありましたし、サポートもしっかりしていました。ポジショニングに彼らしい斬新さも見られました。NO8の国際的な既成概念をもうち破るジャパンのNO8として、成長してもらいたいです。
えらそうなことを述べました。同志社関係者も多い今のジャパン。これから強くなって欲しいというエールです。